古い物のよさを活かし、心地よい店や住まいを作るリノベ建築家

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々③〉
「古い物のよさを活かし、心地よい店や住まいを作るリノベ建築家」
あくび建築事務所 代表 筒井友香さん

筒井友香さん(自身でリノベーションした「交点」にて)

今回ご紹介するのは、秋田県内で住宅のリノベーションや店舗の改装を手掛ける、「あくび建築事務所」代表の筒井友香さんです。

筒井さんは、地元の高校の建築学科卒業後、様々な仕事を経験。東京の人気リノベーション会社「空間社」で住宅のリノベーションのスキルを磨き、秋田にUターン。店舗改装を手掛ける会社を経て独立しました。 

今では筒井さんが手掛けた店が話題を呼び、その店を訪ねた人からリノベの依頼がくるという、いい循環が生まれています。

マイホームは新築という、それまでの“常識”を変え、リノベの文化を根付かせた筒井さん。その道のりと、リノベの先に見つけた新しい事業について伺いました。

様々な仕事を経験して、たどり着いたリノベーションの設計

独立後、店舗改修を手掛けるきっかけとなった「nice time coffee」

筒井さんは現在41歳。2018年に「あくび建築事務所」を立ち上げました。そして今では年間10~15件のリノベやコンバージョン(用途変更)を手掛ける、人気の建築事務所に。しかし、ここまでには紆余曲折がありました。

「地元の高校の建築学科卒業後は、建築から離れ古着屋さんでアルバイトしていました。その後、このままではいけないと東京に出てハウスメーカーに就職。そこでインテリアコーディネーターに興味を持ち、家具屋さんに転職。次の道を考えるようになった頃、縁あって住宅のリノベーションを専門に行う空間社という会社に入社しました」

筒井さんは、空間社でリノベーションの魅力に引き込まれていったと言います。その後、秋田に戻ってきた筒井さんは、店舗改装を手掛ける会社を経て独立。

接客、インテリアコーディネート、家具、リノベ…、その一つひとつが、筒井さんにしかできない、魅力的な提案に活かされています。

依頼者と一緒に一部DIYで改修した喫茶店「交点」

独立当初は新築も受けていましたが、現在はリノベーションに絞って仕事を受けているそう。  

「リノベが好きなんですね。家があるなら壊すより、住み継ぐことに重きを置いて向き合いたい」

現在、戸建てリノベと店舗改修はほぼ半々。

「店舗改修は短期勝負。半年から1年近くかかる戸建てリノベと、いいバランスで仕事できています」

戸建てのリノベではekrea Partsの商品も活躍

実は、筒井さんが店舗改修した店を訪れ、住宅のリノベを依頼してくださる方がとても多いそう。

「手掛けた店舗を見て、ああいう風にリノベしてほしいと言われますが、店舗と住宅で使う素材は違います。住宅は天然素材、店舗は土足に耐えうる素材や汚れに強いものを使います」

そうしたなか、戸建てリノベでは、キッチン・キットやオーダーステンレス天板を使い、大工工事で仕上げるケースも多いそうです。

こちらは、5人で暮らすご家族が、中古住宅を購入してリノベした事例です。キッチンには、幅W2550mm×奥行D900mmのキッチン・キットを採用しました。

キッチンはアイランド型のカウンターキッチンに。通常リビング収納を造作する部分に、一枚板を200mmほど差し込んでカウンターが浮いて見えるように仕上げました。

実はこのお宅では、カウンター以外にも、横並びのダイニングスペースがあります。

「カウンターとテーブル、それぞれで食べるシーンを想定して作ったのですが、現在カウンターは、子どもたちの学習スペースにもなっています。子どもたちがその日の気分で自由に使っています」

キッチンの壁側にはキッチン・キットのカップボード用キャビネット(奥行D450mm)を2つ並べ、集成材の天板を載せ調理家電置き場に。その天板を伸ばし、デスクスペースも作りました。

次にご紹介するのは、築40年の中古住宅を購入し、フルリノベで断熱改修まで行った例です。

「奥様は古いものが大好き。そこで欄間や真壁の雰囲気は残しつつ、リノベしました」

「料理好きな人には、壁付キッチンにしたいと言われることが多いのですが、こちらの奥さんも壁付をご希望。キッチン本体には、キッチン・キットを使用。扉材はラワン合板です」

カウンターの背後にはライニング風にタイルを貼った棚を作り、調味料などの小物を置けるように。フレキシブルボードを張った壁にはオープンな棚を設置。料理しやすいキッチンになりました。

 

最後にご紹介するのは、思い出のある祖父母の家を、お孫さんがリノベして住み継いだ家。

キッチンを造作するにあたり、ekreaPartsのオーダーステンレス天板を採用。現場で下台を造作したキッチンです。

「料理好きのご夫婦で、ふたりでガンガン料理されています。なので、使いやすいオープンな収納に。シンクの下は酒瓶の置き場、中央の作業スペースの下はゴミ箱置き場、コンロ下はフライパン置き場になっています」

前面の壁には、リビング側に作った腰壁の笠木からつながる棚板を渡し、調味料や調理器具がすぐに使えるようにしました。タイルがいいアクセントに。

リノベ現場で救い上げた物を、次の誰かに繋げる古道具屋もオープン

空き家だった夫の祖父母の家に作った「あくび座」

店舗改修や戸建てリノベを手掛けているなかで、筒井さんがずっと気になっていたことがあります。それは、現場に残された小物や今では作れない建具が、ただ産業廃棄物として捨てられていくこと。

「現場には古い食器や味わいのある建具など、設計に活かせそうな物を中心に、コツコツ集めていました。そして、それを何とか活かせないかと」

そして考えついたのが古道具屋です。

「設計事務所として、古い建物を扱っている。そこから出てきたものを、また次の誰かに繋げる。それだけでもストーリーがあると思いました」

ちょうど祖父母が住んでいた家が空き家になっていたので、少し手を入れ、今年4月に古道具屋「あくび座」をオープン。今は週3日の営業で、営業日はInstagram( @acubi_architects)で告知しているそう。

店内には懐かしい古道具が所狭しと並ぶ

「よく売れるのは食器類。しかし、それ以外にも味わいのあるガラスの建具や、欄間などもあるんです。これを再利用してくれる同業者の方にもぜひ来てほしいと思っています」

古い家と出会い、そこに新しい人が快適に住めるようにリノベーションをするのはめちゃくちゃ楽しいという筒井さん。リノベという仕事から、また新たな「道」が広がっていきます。

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