リノベーションをデジタルの力で「ラクに、適正価格で、より良いもの」に

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々 6〉
「リノベーションをデジタルの力で“ラクに、適正価格で、より良いもの”に」
株式会社a-tech 代表取締役 板坂 宜昭さん

株式会社a-tech 代表取締役 板坂 宜昭さん

今回訪ねたのは、マンションリノベに特化した工務店「a-tech」です。代表取締役の板坂宜昭さんは大学卒業後、大手企業を経てスタートアップのリノベーション会社に勤務。その経験を活かし、民泊や賃貸用のリノベ・管理会社を起業し売却。2020年にa-techを創業しました。

その過程で、建築業界の問題点が見えてきたという板坂さん。誰もが「ラク」にできることを目指して、「リノベーションを再定義する」をミッションに掲げ、受注を伸ばしています。 

「再定義」することで、現場の職人と顧客の負荷を減らし、質の高いリノベーションを、適正価格で提供しようと取り組んでいること、そして「ラク」という言葉に込められた思いを伺いました。

現場の課題を「テクノロジー」と「多能工化」で解決したい

a-techが入っているビル

本社は中目黒駅からほど近いビンテージなビルの3階。事業拡大にともない、昨年3月に移転しました。 

会社を立ち上げた板坂さんは、現在38歳。父親が施工会社を経営していたこともあり、幼い頃から建築の現場を身近に感じてきました。大学卒業後は、大手施工会社、スタートアップのリノベ会社に勤め、自身で起業も経験。そのなかで、ずっと感じてきた建築業界の様々な課題があったと言います。

「特に現場で働く職人の負荷は、大きすぎると感じていました。時間の制限や制約があるなか、現場合わせに苦労して夜遅くまで作業したり、お客様からの要望が落ちてこず、ロスや出戻り工事が発生したりすることもあります。こうした問題を解決したいと思いました」

事業拡大にともない増床した新オフィス

現場で働く職人に重くのしかかる負担は、資料は紙、打ち合わせは現場が基本という旧来の慣習によるところも大。この問題を解決すべく板坂さんは、積極的にアプリ導入やオンラインmtgなどを活用し、一人で悩むのではなく、チームで解決する仕組みに。

「職人がアプリを使いこなすことで、資料はすべてタブレットの中に。現場監督が現場に足を運ぶ回数減と、施工管理の工数削減を目指しています」

さらに、職人を積極的に直接雇用。職人にはOJTや研修を行い、職人としての技術と現場を管理する知側を兼ね備えた「リノベエンジニア」を育成に注力。職人を多能工化することで、工期のスピードアップと、施工レベルの底上げに繋がっています。

顧客が抱く「価格の不透明さ」というモヤモヤも解消

マンションリノベを衣替えのように誰もができるものに

板坂さんは、まだまだ「リノベーション」が、一部のおしゃれでこだわりある人の選択肢と思われていると感じています。そして、それをなくすには、身近に感じられ、金銭的なハードルを下げることが大事だと言います。

建築資材が高騰するなかでも、工事価格を抑えることについては、現場の負担を減らせていることで、ある程度クリア。それに加えて、顧客の負担を減らすことで、もっと身近になる工夫も。

「デザインの力とか、お客さまに寄り添う、という言葉が氾濫していますが、そのために多くの時間を割くのはちょっと違うんじゃないかと。私たちは打ち合わせの回数も減らし、顧客に負担をかけずに、デザインリノベーションの枠組みの中で、工事価格を抑えた提案をしてきたいと考えています」

打ち合わせの回数も減らし、満足度を上げるショールームをオープン

近日オープンするショールームの展望を語る板坂さん

「近日、本社のあるビルの同じフロアに“中目黒リノベ研究所”という名称のショールームをオープンします。これまでの施工実績をもとに、建材や設備を自社パッケージして提案、この場所で体感することで、イメージが明確化し、打ち合わせの回数をさらに減らすことができます」

これにより、顧客と設計、施工の職人、それぞれの負荷も減り、顧客満足度と収益性を上げていくことができるはずだと、板坂さんは言います。

ショールームにはekrea Partsのキッチン・キットも展示

キッチン・キットは家ごとのテイストを出しやすい

この中目黒リノベ研究所には、ekrea Partsのキッチン・キットの設置工事が進められていました。積極的に採用してくださっている理由を伺うと…。 

「キッチン・キットは規格が決まっているので、選びやすいですね。コストを抑えて、扉材を変えることで、その家ごとのテイストを出しやすいこともいいなと思っています」

それ以外にもメリットが。積極的に採用することで、現場の職人も慣れて、工事の効率化にもつながっているそうです。

キッチン・キットを採用した施工事例を見せてくれました。顧客の要望に合わせて仕上げも様々。

明るい色調の木のキッチン

こちらはシナ合板にクリア塗装を施したペニンシュラタイプのキッチン。コンロ脇の壁には黄色いタイルを貼り、清潔感のある明るいキッチンになりました。

落ち着いた色調の木のキッチン

同じ扉材でも濃い目の塗装を施すと、写真のように落ち着いたキッチン雰囲気のキッチンに。

土間に似合うモルタルのキッチン

こちらは、LDKのキッチン部分を土間にして、キッチンの腰壁もモルタルに。

キッチン・キットは「ラク」に造作キッチンをつくれるよう開発された商品。現場の負担軽減、工事費の適正価格、そして顧客の満足にも貢献できていることは、大きな喜び。

a-techのマンションリノベがもっと身近になる取り組み。そして、現場も顧客も「ラク」にマンションリノベできる挑戦、これからますます楽しみです。

表示件数
並び替え