株式会社 wood works SORA

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々24〉
「使う人に一生寄り添い、美しさが増していく木のキッチンを届けたい」
株式会社 wood works SORA 代表取締役 田口賢一さん

田口賢一さん(仕事場にて)

今回ご紹介するのは、岐阜県の加子母という山深い地で、木の声に耳を傾けながらオーダーキッチンをつくり続けているwood works SORAです。

建具職人だった父の遺志を継ぎ、代表の田口賢一さんが、木の家具のような、使うほどに味わいを増すオーダーキッチンを製作している工房です。

LDKの顔となり、家にも暮らす人にも馴染んでいくキッチンへの想いをインタビュー。春日井につくったショールームの情報も詳しくご紹介します。

山に囲まれた土地で、木の声に耳を傾けながら、キッチンを製作

木工機械が、所狭しと並ぶ工房内

wood works SORA の工房は、銘木、東濃ヒノキの産地でも知られる、岐阜県中津川市加子母にあります。工房の代表・田口賢一さんは、建具職人の父の元に生まれ、職人の技を身近に感じながら育ちました。

「ここは、山と木に囲まれた土地。木の声に耳を傾けながら、キッチンをつくるにはとてもいい環境です」(田口さん、以下同)

作業場で木を熟知した職人が、1台1台つくり上げていく

父の作業場だった建物をそのまま引き継いだ工房には、昇降盤や手押しカンナ盤といった木工機械が、所狭しと並んでいます。

「もともとは建具一本でやっていたんです。オーダーキッチンは、お世話になっている工務店さんから、〝木製キッチン〟に挑戦してみないかとお声がけいただいたのがきっかけです」

工房には、木のことを熟知した職人がいます。田口さんにとって、新たな挑戦はそれほどハードルが高いものではなかったと言います。

職人の技が光る、開き扉と引き出しを組み合わせたリビング収納

「建具屋って、結構たくさんの材種を使うんです。私自身、貪欲に木のことを勉強したというか、なるべくたくさん木を触るようにしてきました。そのことが、オーダーキッチンづくりにも活かせると思ったんです」

それに、造作家具はお手の物。

「キッチンは、天板は木の素材ではなくても、家具みたいなものじゃないですか。いい造作家具をつくる自信があったので、本物の材と技にこだわりながら、いいものをつくっていきたいと思いました」

キッチンの名称は〝選りすぐりの素材〟の意味を込めselezinoに

オーダーキッチンを組み立てるときに使う部材

さっそく、オーダーキッチン事業をスタート。ブランド名は「selezino(セレジノ)」と決めました。この聞きなれない言葉の意味を伺うと…。

「あるポルトガル語の文章のなかにあった言葉なんです。〝選りすぐりの素材〟というような意味の言葉です。その語感に惹かれ、〝選りすぐりの素材で、使い手の一生に寄り添っていくキッチンをつくろう〟と、セレジノという名称に決めました」

春日井市にあるショールーム

そして、2014年には、愛知県春日井市にショールームをオープン。唯一無二のオーダーキッチンですが、ここに来れば、実際に見て触ることもできます。

ショールームに展示されているキッチン

ショールームには、樹種もデザインも異なる4台のキッチンを展示。予約して相談に来られたお客様には、実際に触れてもらい、キッチンを入れるLDKの床の色や、壁の素材などを聞きながら、デザインの要望やその空間に合うテイストの樹種を決めていきます。

好きな樹種はクルミ。濃すぎず薄すぎない、絶妙な色が魅力

クルミ材を使ってつくったキッチンの納入事例

様々な樹種でつくられたキッチンがあるなか、ズバリ、田口さんが好きな樹種を聞きました。

「私はクルミが好きです。理由は、木肌の色が濃過ぎず、かといって薄すぎない、ちょうどいい感じだから。もちろん、よく使われるタモやナラ、外材だとブラックウォールナットやチェリーもいいと思いますが…。クルミがいいなと思ってショールームに置いたら、それを選ぶ人が増えました」

キッチンからは大きな梁を介して、リビングへと視線が抜けていく

こちらは、クルミ材を使った古民家リノベーションのキッチン事例です。

壁や仕切りを取り払い、LDKは一室空間に。土間から一段上がったリビングダイニングには、天然石を敷き、石畳のような雰囲気にしました。見上げると、古民家ならではの立派な梁が。

重厚で心地よい空気感に、クルミ材の温もりが美しく調和し、空間の品格をいっそう引き立てています。

キッチンはL型に。自由にレイアウトできるのもオーダーキッチンの魅力

確かに、タモやナラと比べると色は濃いですが、色が濃くて印象が強めになるチーク、ブラックウォールナット、チェリーまでは濃くありません。その間の絶妙ともいえる色です。

「クルミ材は、決して高くはない。だた、市場に多く出回るものでもないんです。そのうえ小径木なので、大手の家具メーカーさんがやろうとすると、数が揃えられない。私たちのように小さな会社だから扱える、魅力的な木です」

キッチンにはekrea Partsのオーダー天板やEシンクを採用

  

アイランドキッチンに採用したポケット付きEシンク

木を扱うプロであってもキッチンには、天板やシンク、コンロ、水栓などが必要になります。その部分をekrea Partsが担っています。

写真は、オーダーステンレス キッチン天板のバイブレーション仕上げと、ポケット付きEシンクを採用したキッチン。

「フルフラットのキッチンの場合、リビング側からすっきり見えるよう、洗剤を収納するポケットがあるEシンクをおすすめしています。それ以外にも、ヨコ型の包丁差しやカトラリートレイなど、標準仕様にしている商品は結構あります」

さっそく、ekrea Partsのオーダーキッチン天板を採用した事例を見ていきましょう。

Case1.天板に人工大理石を使用し、格子のようなリブ加工を施したキッチン

リブ加工が木の美しさをより際立てるキッチン

こちらの事例は、木目の美しさをより際立てるよう、リブ加工を施し、格子のように見せるというコンセプトでつくったキッチンです。天板には、ekrea Partsのオーダー人工大理石天板を使用。サイズはW2700mm×H900mm×D900mmです。

木目が美しいタモの突板の扉

建具の技術があるので、美しい格子のような木材加工もお手のもの。

「既製のキッチンは、新品で購入した時が絶頂期じゃないですか。それに比べて、木のキッチンは、経年変化して木のいい味が価値を上げていってくれる。そこがいいじゃないですか」

Case2.キッチン・キットをベースにしたセミオーダーキッチン

無垢の木床、板張りの天井と馴染むキッチン

selezinoでは、完全オーダーキッチンとは別に、セミオーダーキッチンもつくっています。

「セミオーダーだと、コンロや食洗機込みでも200万円程度。地方なのでフルオーダーしても、東京と比べると4割程度安いと言われます」

リビング収納越しにキッチン、カップボードを見る

ekrea Partsの「キッチン・キット」をベースに、天板はステンレスのバイブレーション仕上げを採用。タモ材をまとわせました。

背面のカップボードや、リビング収納も同じ材を使い造作。床や壁の色とも馴染む、優しい印象のキッチンになりました。

最後に、田口さんに今後の目標を伺いました。

「木のキッチンは、歳月の経過と共に表情を変えていきます。劣ってゆくのではなく、より味わい深く変化していきます。これからも、木の質感が心地よい、使う人に一生寄り添うようなキッチンをつくり続けていきたいと思っています」

「一生寄り添ってくれるキッチン」。取材を終え、その言葉が深く心に残りました、豊かな暮らしには、いちばん大事なものかもしれないと。

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