イシハラスタイル(後編)
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々23〉
「設計の力で、住むほどに愛着が深まる〝道具のような家〟を建てる(後編)」
㈱イシハラスタイル 代表取締役 石原 真さん 石原智葉さん
「タフなキッチン®」を採用した事例。手前はオリジナル家具の「タフな作業台」
前編では、株式会社イシハラスタイルが提案する「道具のような家」の魅力を紹介してきました。
代表の石原真さんと智葉さんは、その家で使われるキッチンも、道具のようであってほしいと考え、今までにないタイプのキッチンを開発しました。それが「タフなキッチン®」です。
今やイシハラスタイルの代名詞となっている、「タフなキッチン®」誕生秘話と、その魅力をレポートします。
新築時が一番きれいなシステムキッチンとは違う、使い込むほどに味が出て、家族の記憶になっていくキッチン。そこにはekrea PartsのEシンクが使われていました。
施主の要望と素朴な疑問から生まれた「タフなキッチン®」
ガスコンロはビルトインじゃなくてもいい!?
今ではイシハラスタイルの代名詞となっている「タフなキッチン®」。それは、施主へのヒアリングがきっかけで誕生しました。
「お客様が、こういう台所にしたいというイメージを、具体的に教えてくれたんです。その方は、栄養士をされている30代の奥様。料理がとてもお好きな方で、子どもたちの給食のメニューを考えるお仕事をしていました」(真さん)
真さんは以前から造作キッチンも手がけていましたが、その施主との会話の中で、もっと本質的なことに気づかされたと言います。
「〝扉って要るのかな?〟〝木の天板って、まな板と変わらないよね?〟〝そうか、置いてあるだけでもいいんだ!〟と思い至りました。そこで、本質をついた自分たちが欲しいと思える形で、キッチンを作ってみたんです。それが、タフなキッチン®の第1号になりました」(真さん)
タフなキッチン®の施工事例。道具のようなダイニングテーブルも開発
真さんは同じ頃、『料理上手の台所』という本と出合います。
「紹介されているのは、大したキッチンではないんです。コンロも置いてあって、換気扇もプロペラファンみたいな、昔ながらのキッチンばかり。でも、なんかおいしそうなご飯が食べられそうだな…、と思わせてくれるキッチンが紹介されている本でした。すり鉢とすりこぎ棒が出ていたりして…、これだけで、料理好きだねって、すごく伝わる。この本から、こういうキッチン作りたいねという具体的なイメージが湧いてきました」(真さん)
この設備しか使えないという言い訳はしたくない
業務用のガスオーブンとコンロが置かれたキッチン
写真は、結婚を機に生まれ育った場所に、二世帯住宅を建てた住まい手のキッチンです。子世帯(写真)も親世帯もタフなキッチン®を採用しました。
サイズは幅2700mm×奥行き650mm。天板には段差を設け、シンクのある天板から一段下がった場所は、置き型のコンロと業務用のガスオーブンの定位置に。
「業務用のガスオーブンは、実はお手軽においしい料理ができちゃうんです。庫内が大きくて掃除もしやすいのも魅力。それに、壊れにくいので一生ものに近い機器です。このガスオーブンとコンロのセットを置くことで、タフなキッチン®の形が決まりました」(智葉さん)
火力の強い調理機器が欲しくても、ビルトインタイプでは限界があります。そこで妥協すると、〝料理好きのキッチン〟にはなりません。
「この設備しか使えないという言い訳はしたくなかったんです。火力の問題も、何か方法はないかと考えていったとき、みんな嫌いだと思っていた、据え置きのコンロやガスオーブンの魅力に気づきました。掃除しやすいし、これならお客様におすすめできると」(真さん)
シンクはオーバータイプのEシンクを採用
水栓は壁付けにし、シンクにはekrea PartsのEシンクを採用。オーク材の木天板によく馴染んでいます。
「Eシンクはステンレスの厚みがあり、素材としてのタフさがあります。施工性もよく、フランジ(縁)の面取りがされていて、木天板に馴染みやすいので使っています。四隅が10Rで掃除もしやすいも、施主におすすめできるポイントですね」(智葉さん)
ところで、水栓金具が壁付けなのはなぜ?
「水栓とキッチン本体が分かれていると、動かせるからです。タフなキッチン®は、壁や床が全部出来上がってから、設置しているんです。多少の固定はしていますが、将来、こっちに置こうとなったら引っ越せるんです」(真さん)
キッチンでは、水栓金具は本体に設置。コンロはビルトインというのが一般的です。しかしそれだと、動かすことはほぼ不可能です。
「設備と建築を明確に分けるというのも、僕らのテーマ。建築の方で壁出しの水栓をやって、キッチンは家具のようにあとで置く。将来もし修理が必要な際も、設備機器に左右されることなくメンテナンスでき、育てた思い入れある木製キッチンを使い続けることができます。そのように想像すると、住まい手もタフに使っていくのが楽しみになるのかなと思います」(真さん)
ちなみにキッチンは、1軒1軒、プランをもとに、智葉さんが使い方をしっかりと想像し、施主と何度も打ち合わせたうえで図面を描き、広島県府中の老舗家具工場が製作します。
「オークの無垢を使い、工事現場で作るのではなく、老舗家具工場で製作し納品するので、何十年も使えるタンスや椅子やテーブルなどの置き家具と同等のクオリティでできています。天板を変えることも可能なので、100年くらいは余裕で使えるよね、と話しています」(智葉さん)
そこにいることが楽しいと思ってもらえるキッチンに
玄関を入るとすぐの場所にあるLDKに置かれたタフなキッチン®
こちらのお宅は、玄関と仕切りを設けず23畳のLDKをプランしました。写真のタフなキッチン®は、いちばんポピュラーなサイズの幅3400mm×奥行き650mm。まだ、入居前なので、まだ眠っているよう。
暮らしと楽しさが伝わってくるキッチン
そしてこちらの写真は、入居して半年ほど経ったキッチンです。暮らしの道具が少しずつ増えてきました。このお宅の楽しそうな暮らしが見えてきませんか?
「私は、家って〝記憶〟だと思っているんです。日々の主役である台所は、しっかりと記憶が刻める場所であってほしい。そこにあるタフなキッチン®は、とてもよい仕事をしてくれると思っています」(真さん)
経年変化していき、多少のキズや汚れも記憶になっていくキッチン。キッチンも道具なので、住まい手が使いやすければ、木製の脚にフックを付けてもいいと言います。
「タフなキッチン®を採用してくれたお宅に、何年後かに行くことがよくあるんですが、それが無茶苦茶楽しくて(笑)。それぞれの家の生活がにじみ出ていて、特集したいくらいです(笑)」(真さん)
株式会社イシハラスタイル
一級建築士の資格を持つ夫婦が施主と対話を重ねながら、これからの暮らしに最適な家を提案。地元で採れた杉板や三州瓦を使用することで、地域に溶け込み、環境にも優しい住まいを建てる工務店。家具メーカーとも関係が深く、オリジナルの空間づくりも得意。タフなキッチン®やオリジナルの家具は購入可能。施工エリアは愛知県内(一部地域を除く)。
〒444-0324愛知県西尾市寺津町亀井22
TEL:0563-58-1231
HP: https://www.ist-a.com/