「設計士と職人がワンチームとなって心地よい家を建て続ける工務店(後半)」
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々17〉
「設計士と職人がワンチームとなって心地よい家を建て続ける工務店(後編)」
株式会社COMODO建築工房 代表 飯田 亮さん 取締役 石川弘樹さん
自邸「つくるいえ」をご案内くださった石川さん
前編では、COMODO建築工房の家づくりへの想いと強み、そして設計士と職人の関係がフラットで、近い関係にあるから実現できた、キッチンと洗面の造作事例を紹介してきました。
引き続き後半では、事務所での取材のあとご案内いただいた、石川さんの自邸「つくるいえ」をレポートします。
こちらは、COMODO建築工房が得意とする20坪台の平屋。実際の床面積以上に広く感じる室内には、家族4人が思い思いに過ごせる〝居心地のいい場所〟がたくさんありました。そして、家での時間が豊かにしてくれる造作も随所に。
キッチンにはekrea Partsのポケット付きEシンクや包丁収納、スライドストッカー。洗面所にはフレックスシンクが。あわせて紹介します。
家族4人が暮らす自邸は、アトリエが真ん中にある26坪の平屋
「つくるいえ」の外観
石川さんは妻と子ども2人の4人家族。自然に恵まれた場所で子育てしたいと、田園風景が広がる自然豊かな場所に家を建てました。設計にあたっては、その景観に溶け込みつつ、室内に取り込むことを意識したと言います。
「屋根の勾配は、2寸か3寸あれば十分なんですが、あえて茅葺屋を彷彿させる急勾配屋根(6寸)に。そして外壁は、古民家の土壁をイメージして、火山灰を主原料とした塗り壁(そとん壁)にしました」
玄関まわりは、地元・日光杉の縦板張りに
地元名産の大谷石を敷いた先に玄関が。大屋根に包まれたような玄関スペースには、日光杉を張りました。そして、自然塗料の「プラネットカラー」を塗装。
玄関を入ると、アトリエがお出迎え
引き戸を開け中に入ると、まず目に入るのはアトリエ。石川さんの趣味(革工芸)の工房として、また妻の裁縫スペース、子どもたちの工作や勉強スペースにもなる、みんなの〝作業場〟です。
玄関の正面に位置するキッチン
そして振り返るとキッチンが。このキッチンと玄関の間には、麻のロールスクリーンの建具をはめています。目隠しになりつつ、キッチンにいても帰宅した家族の気配が伝わります。
アトリエがプライベートスペースとパブリックスペース分けるプラン
上はこの家の平面図。アトリエを家の中心に配し、パブリックスペース(LDK)と、プライベートスペース(個室・水まわり)を振り分けたプランです。
「アトリエを書斎のように2畳で仕切った狭い空間にすると、使わなくなると思いました。そこで、オープンにして共用スペースにしたんです」
アトリエがあることで、家族それぞれが作業に集中できる〝場〟ができました。それだけではありません。どこへ行くにも通る場所なので、家族の会話も生まれます。
リビングやアトリエにいる家族を見守る司令塔のようなキッチン
キッチンはⅡ型プラン。アイランド部分は木天板に
キッチンはアイランド部分にシンク、壁側にコンロを配したⅡ型プランです。
アイランド部分はW2100mm×D930mm。天板はレッドオークの横はぎ材を使用。リビングへ抜ける通路側には収納を設けています。
壁側のステンレス天板の部分はW1830mm×D600mm。面を合わせダイニング側には収納棚を造作しました。
ダイニング側からキッチンをみたところ。ekrea Partsの商品が随所で活躍!
キッチンには、至る所にekrea Partsの商品が採用されていました。
ポケット付きEシンクについて語る石川さん
「シンクはポケット付きEシンクのオーバータイプ(内寸W760mm)を使っています。ポケット部分に洗剤ボトルやスポンジを置けるので、すっきりとした印象になります。また、水栓の穴もシンク内にあるので、水漏れやシミができる心配もありません」
ちなみに、水切りかごもekrea Partsの商品です。
シンクの手元には幕板包丁収納
シンクの手前の幕板部分には、「幕板包丁収納W900 4本差し」を取り付け、包丁の定位置に。
「COMODO建築工房では、ナラの横はぎ材の天板と、この幕板包丁収納、ポケット付きEシンクは、標準仕様としています。相談に来られた方にはモデルハウスとしても使っているので、使い勝手も体感いただけます」
コンロ側にもekrea Partsの商品が…
こちらはコンロのある壁側。手前の引き出しには、食器類を収納しています。
ekrea Partsのスライドストッカー
そして、コンロ横には、一升瓶が収納できるW150mm(外寸)のスライドストッカーを設置。調理しているときもすぐに取り出せます。
リビング収納は扉に工夫が!
リビング側にも収納を設けました。手掛け部分には、なめした革を貼っています。手に当たる感覚が優しく、ヒヤッとしません。これはいいアイデア。
石川さんが作った革のペンキャップやアクセサリー
実は石川さんの趣味は革工芸。作品はネットでも販売しています。アトリエで製作しているときに出た革の端材を利用して、手掛け部分に貼ったのです。
木天板にしたことで、家の雰囲気にも馴染んだキッチン。使い勝手だけでなく、手触りもよい仕上がりになりました。
キッチンの先には居心地のよいリビングが
キッチンからリビング方向を見る
L形に配置したLDKの東側には大きな開口を設けました。この場所からは季節ごとに表情がかわる山々を一望できます。その景色を取り込んだダイニングとリビングは、この家の特等席です。
リビングは一段下げてカーペット敷きに
「LDKは建具が少ない分、単調になりやすいので、リビングの床を下げたり天井の素材を変えたりして、視覚的に変化をつけました」
サッシ、障子のほかに簀戸や雨戸もはめ込まれています。夏は簀戸にして日差しを遮りつつ、涼しい風を家に取り込めます。
リビングからキッチンを見る
キッチンとダイニングがある場所の天井高は2m。包まれているような空間と、屋根表しの開放的なリビング。それぞれの場所で、違ったくつろぎ方ができるLDKです。
フレックスシンクを採用した洗面台にも造作ならではの工夫が
フラットタイプを採用した洗面台
洗面所には、ekrea Partsの人工大理石一体洗面カウンター「フレックスシンク」を採用しています。
サイズはW1150mm×D600mmのフラットタイプ。下台は、ラワンランバーにホワイトのOP塗装した扉に、手掛けにはキッチンと同じく革を貼った造作です。
ミラーキャビネットも造作
ミラーキャビネットも造作。隠す収納も見せる収納もある1枚引き戸のタイプに。
引き出しの中にも工夫が
洗面ボウルの横には引き出しを設け、下にはスツールを収納できるオープンスペースを作りました。
この引き出しが秀逸!前板には穴があります。これはティッシュの取り出し口。引き出しを開けると、手前にはティッシュが、そして奥にはドライヤーやヘアアイロンの、収納場所になっているのです。
今回の取材を通して、小さな家でも、家族の〝場〟をつくれ、豊かな時間が生まれること。造作することで、心地よい暮らしが実現できることを体感できました。
石川さんの家を訪ねたことで、ホームページでよく目にした「COMODOスタイル」というこの場の意味がよく理解できた気がします。
株式会社COMODO建築工房
デザインの美しさと高水準の断熱・気密性能を兼ね備え、「生涯にわたり幸せを感じられる住まい」を提案する工務店。コンパクトな家でも家族の居場所がたくさんある設計手法には定評がある。施工エリアは栃木県内。ただし、設計業務は県外案件も柔軟に対応している。
〒321-0913 栃木県宇都宮市上桑島町1465-41
℡:028-689-9560
HP:https://www.comodo-arc.jp/



